ウラ& 良太郎(←黒(笑))×モモ
小説 紫水さまv


『夜叉の面をとって』パート2
『非日常的な日常』

  









デンライナーの食堂車内。

ひま〜とばかりに、モモタロスは知恵の輪はあきたのか、一人でカード遊び、ウラタロスは金魚釣り遊びを置い
て、スプーン曲げにいそしみ、キンタロスはまた冬眠してしまった様子。

彼らを見て、大きく溜め息をついたハナ。

「さて、これから良太郎を迎えに行くから。」

「やった〜!!今日は俺が待ってるって言ってくれ〜!」

「フ〜ン、じゃあモモと良太郎にお使いを頼むわ、ちゃ〜んとまともに買って来てね。」

「?ああ。何でもいいぜ。」




デンライナーが停車したところは、ライブラリーカフェ「ミルクディッパー」

良太郎の姉の店。




ハナの目の前には豊かな芳香の珈琲カップが置かれた。

「良太郎はもうすぐお使いから帰って来ます、お持ちになって、ハナさん。」

「ええ、私ここの珈琲がとても気に入って、とっても美味しいわ。」

「この子たちは良い仕事してくれますから。」

二人がにっこりと笑ったところへ星の本を抱えた良太郎が戻って来た。

「ハナさん。」

「良太郎を待っていたの。」

「何か?また出たんですか?イマジン。それともモモが暴れてるとか?」

「確かにモモタロスは暴れたがってるわ。今日はね、君にちょっと頼みたい事があってね。ふ・ふ・ふ・・・」

ニヤリと唇の端をゆっくりと上げたハナ。

「何か・・・・ハナさん怖い・・・・」

「びびらなくてもいいから・・・さて時間が来たかな?」

ハナは頬がひきつりかけた良太郎の腕を引っ張るようにドアに向かった。

「じゃあ、ちょっと良太郎君をお借りします。」

「はい。どうぞ〜あ、良ちゃん、これを飲んで行きなさい。」

目の前に出された大振りのゴブレットにはレモン色の液体が・・・・

「今朝飲まずに行ったでしょう?元気出す為にも特製のレモネードよ。」

「特製?」

「そう、先日とある会社から一年分の清涼飲料水の壜が贈られて来たのよ。CMご出演有り難うございました。
おかげさまで売り上げも好調ですって。」

不運な良ちゃんにこんな幸運が舞い込んだなんて嬉しいわ・・・・で、それにちょっと更に健康になるように、
漢方のにんじんと生姜とにんにくとかをブレンドしてみたわ。」

「え〜と・・・・姉さん?それって・・・・そのまま飲んだほう・・・」

「え?なに・・・・?良ちゃん?」

「いいえ、飲んで行きます。」

「良太郎、時間よ。」



「良いお姉さんじゃないの。」

デンライナーに乗り込みながらハナは良太郎を振り返ると、彼はまだ口元を押さえていた。

「そのまま飲んだほうが・・・・幸運が・・・」

「ま、確かにどんな味かは想像出来ないけど、力沸きそう・・・・」

食堂車のドアが開いたとたんにハナがこめかみを押えた。



「よお、良太郎。やっと参上か?待ってたぜ。」

「また〜あんた達喧嘩?何取っ組み合いしてるの!」

「食堂車が脱線しちゃうじゃないの!この馬鹿モモ!エロ亀!」

ぼくっと殴られて、背中を踏みつけられたウラタロスはその瞬間力が抜けたか、モモタロスがウラタロスの下から這い出て来た。

「この亀公!覚えてやがれ!」

相変らずのイマジンたちの騒動に良太郎がくすりと笑った。

「退屈そうだね?モモ。力余ってるんだ。」

「この先輩をからかうだけで僕は満足だけどね〜すぐひっかっかってくれるから退屈しないよ。」

「こんの〜!!亀公今度甲羅ひん剥いてやる!!」

「モモ、出掛けるよ。」

「おっし、待ってました!だがな、イマジンの匂いはしね〜ぞ?」

グッとモモの角をひいて、ハナが命じる。

「もうさっき言った事忘れたの!さっさと買物をして来るのよ。」

「あ、そうでした・・・へへ、で、何買って来るんだっけ?」

「良太郎が出したCDが売れ行き好調だって言うから聴いてみたくなったのよ。」

「さっさと行く!」

「え?」

「あ!」

「げっ!!」

ウラ、良、モモ、三者三様の反応はいかなるものか?




モモと良太郎はデンライナーから放り出されるように外へ出て、とあるドアを開けた。

「相変らずきっつい女だぜ。」

『じゃ、僕眠るから、悪さしないでね。ひとやすみひとやすみ・・・・』

「お、おい、おい、りょうたろう・・・それはねえぜ。店知らねえし、お前が喋ってくんねえと面白くねえ・・
・・」

『独り言ばかり喋ってると変に見られるから。余り声を出さないで喋って。』

「むちゃくちゃ言いやがる。」

商店街を歩いていくとCDショップが見えて来た。

『ここだよ、モモ、ここでCDが買える。』

「お前これ聞いたか?」

『歌ったんだよ、モモだって同じでしょう?別録りだったけど、君が先に歌ってくれていたからやりやすかったよ。』

「いいや、次の俺の決め台詞入りの方・・・・」

『ああ、聴いてないけど。じゃ、試聴してから帰ろうか?』

『試聴ルームって書いてある部屋に入って。』

「・・・・・」

『モモ?』

黙ってヘッドホンを掛けセットしてソファに座り込んだ。

『へ〜凄い上手くシンクロさせてある。モモ、君の声って凄いな〜改めてこうして聴くと惚れ惚れするよ。』

『モモ?モモタロス?』

「・・・・・・」

『これだね?モモタロスバージョン。』

「・・・・・・」

『わあ〜、決め台詞がばっちり。新録したんだね?カッコイイよ。』

とあるセリフで良太郎の顔が、というか、モモタロスが真っ赤になった。

『どうしたの?』

「ア〜、い、いや。その時はなんとも思わず叫んだんだけどな〜」

『何かヘンなところあった?』

『ああ、そうだ、この前ねキンタロスに、暴走イマジンにモモの真似して何でもいいから撃っちゃって、って言ったらせっかちだな、落ち着けといったこと言われて。モモはぶち込め〜!って言ってたんだよね?性格似て来たのかな?』

「!!」


『モモ?』

「や、やばいよな、そのセリフ・・・・悪いイマジンみたいだ・・・」

『?どこが?どうしたの?』

「・・・・あ〜」

ばっと立ち上がるとベッドフォンを外す。


「さて、さ、帰ろうまた殴られるんだぜ、遅い!!ってあの鼻くそ女。」

『モモ、後でゆっくりと聞くからね?心臓がどきどきしている。』

「――あ〜うっせ〜やっぱどっかで遊ばせて貰って来るから、お前はもう寝ろ。」

『だめ!”CD割られたら大変だから真面目に帰ろう。』

モモタロスは、は〜と溜め息をつきながら、一房が赤毛になった良太郎の頭をかかえた。


CDを購入すると店を出た。

店員は、モモタロス仕様の良太郎がCDジャケットの本人だとは気付かなかった。


暴れたがるモモタロスをなだめながら、無事デンライナーに戻って来た。

「せんぱ〜い、待ってました〜」

「何が先輩だ、何が待ってましただ、てめえだって収録したって聞いたぞ。」

「ええ、先輩のようなベタなセリフではなくて、もっと洗練した言い回しにして頂きましたよ。」

「セリフバージョンなんてなんてもう女の子がうっとりして釣られてくれる、僕のいい所がばっちり。」

「お待たせ〜珈琲です。お疲れ様でしたね〜」

「聴きましょ聴きましょ。早く聞かせて下さいよ。カウンターの所に音響セットがありますから。」

「おや〜気が利きますね〜さすがこの上手い珈琲を入れてくれるナオミ君。」

「今度一緒に外に出かけようか?君ならここにいるよりもっと綺麗に見えるだろうな〜?絶対保障するから・・・


「うわ〜うれしい!」



音楽が流れ始めた。

「へ〜〜〜これはなかなか・・・・」

「さすがモモ先輩・・・・素晴らしい。こう胸がわくわくしますよ。」

「うるせ〜亀!近寄るな!」

「誘われているようでたまらない・・・・」

「そうか・・・やはりお聞きしていた通り、あのセリフは先輩の隠れた願望だったのですね・・・・?」

「黙れ!!エロカメ!くそガメ!!」

足でお互いを蹴り出した様子を見て良太郎が言う。

「ウラタロスと仲いいんだね〜キンタロスが来たおかげかな?」

「・・・・・ちょっと妬けるかも?」

「良太郎?」

「良太郎君も感じるよね〜モモの声って色っぽいよね〜叫んでる言葉さえも誘われているのかと思ったんだよね〜」

ウラタロスは、いつもの癖で指で髪をかき上げる仕草をしながら、立って叫んでいるモモタロスを流し目で見上
げた。

「こんの〜エロ亀!もう二度とこの話はすんじゃね〜!」

ぎゃあぎゃあと赤面して叫んでいるのだが、悲しいかな赤鬼の面では誰にも判らない。

「そう?褒めて尊敬してるんだけど?良太郎とダブルでやったらもっといい感じだろうね〜?」

「やかましいてめえの嘘つきセリフなんかいらねえ!」

「じゃあ、最後にモモ先輩はもう敵にも誰にもぶち込め〜!!って言わないで下さいよ?」

「はあ〜?」

「判らないからまたからかいたくなるんですよ。可愛いな〜。ほんと誘われてるのかと思っちゃいますよ。」

「げっ!」

一声息を詰まらせて口元を隠した。

「自覚あるんですね?」

「う・うっせえ!!そんなもんねえよ!!」

「これは僕の真実。実はいつも先輩のこのラインに悩殺されてるんです〜」

すう〜っとウラタロスの気取った冷たい指先がうごいた。

モモタロスの脇から腰にかけてのラインを尻から逆に撫上げた。


「っ!!!・・・・」


「おい、ウラ、いい加減にしとけ、硬直してるで、気いうしなってるんちゃうか?」

今まで寝ていたのかむっつりと内緒で聞き耳立てていたのか、キンタロスが急に止めに入った。

「きゃあ、モモちゃん泡吹いてる〜!」

ナオミの声に、ウラとモモの、相変らず地を這うような低レベルの会話に頭を抱えていた、ハナと良太郎はモモタロスの傍に駆け寄った。


「わああ〜モモタロス〜大丈夫?白目むいてる〜」

「馬鹿モモ、憤死したか・・・これしきで。良太郎隣の車両に移すわよ、ナオミちゃん手伝って。」

「まかせとき。」

ぐいっとキンタロスがモモを抱き上げると軽々と食堂車を後にした。

慌てて良太郎が後を追う。

「まったく。あんた達の喧嘩はもっとスマートに出来ないの。うるさいったらありゃしない。」

「仕方がないでしょ、相手が相手だから?さりげな〜く嫌味を言っても通じない馬鹿モモだから。」

「じゃあ、からかわないで欲しいわね。」

「もう面白くて可愛くてからかいたいんですよ、いい暇つぶしのおもちゃだ。」





「何事ですか?今日もまた何かありましたか?」





頭の上で静に声を掛けられた。


「こんにちは、ああ、ハナちゃん、申し訳ないんですが、ちょっとお使いに行ってくれませんかね?」

「はい、いいですが。何を?」

「あ・な・た・の写真集ですよ。発売になったようですね〜さぞ綺麗に色っぽく撮れてるんでしょうね〜?」

「オーナー!」

「おお!この僕とした事がそのような素晴らしいものを見落としていたとは!」

「ささ、参りましょう、早速良太郎君に身体をお借りしてエスコートさせて下さい。」


ステッキがすっとウラタロスの前に差し出された。


「ウラタロス君、感じませんか?それは暫く無理でしょう。別に今すぐでなくていいですから、良太郎君の身体が空いてからで良いですよ。」

「ね?キンタロス君?やはり追い出されたのですね?」

「ナオミ君、皆にいつものプリンを、私にもね。今日こそは旗に勝って見せますよ。」

上機嫌のオーナーに不審の目を向けるウラタロス。

そしてモモを担いで戻って来た、キンタロスに目を向ける。

黙ったまま戻って来た顔を見ると、何も聞くなという雰囲気を撒き散らし、そして、真っ赤になって口をへの字にして勢いよく席に着くと、必死に目を瞑った。

「は〜い、ナオミ特製プリンです〜ごゆっくり召し上がれ。」

「・・・・あ!」

ぶるぶると震えてスプーンを取り落とすと、ウラタロスは慌ててキンタロスの元に走り込み、ひそひそと声を交わすと頭を抱えて突っ伏した。

「プリン美味しくないですか〜?」

「いいえ、大変美味しゅうございますよ。」

「そっとしておいて上げなさい、イマジン同士の事ですから、彼らだけにしておきましょう。」

「ほっときゃいいわ、あんなやつら静かになってせいせいする。」



コンパートメント


キンタロスに座席に寝かされたモモタロス。

顔に濡れたハンカチをのせられて正気付いた。

そのモモタロスを心配そうに覗き込む良太郎。



「モモタロス?だいじょうぶ?」

「・・・・・」

「モモ。ね?僕よりウラタロスの方が一緒にいる時間長いよね?最近はキンタロスをかまってるし・・・・」

「?」

「ウラタロスに触られて感じちゃったの?」


「僕見てたんだ。今日へンだったから・・・・試聴ルームでの君の様子。二人は一緒なんだから判るんだよ。」

「でもさすがに、モモって・・・・ぶち込め〜って誘ってたのか〜、気が付かなくてごめんね?」


「ウラタロスはさすがだな〜でも、僕の方が君を・・・・先にもう味見したよね?」

「レコーディングの時、あんなに君のいい声に合わせるのって大変だったんだから、ご褒美貰っていいよね?」

「ここまで誘われていたとは・・・・いただきます。さて、その夜叉の姿を取ってもらおうかな〜?」


「て、てめえだってウラタロスにころっと騙されて、いいようにされてるじゃねえか!」

「妬いてくれてるの?やっと喋ってくれた。可愛い・・・モモ。」

「お、俺達はつながってるんだぜ?出番がなくてよ、どれだけ我慢してるか・・・・・」

「そう、僕と一緒になりたいのを我慢してくれてたんだ。」

「君は我慢で来ても・・・・僕は我慢出来ない・・・可愛いモ・モ・タ・ロ・ス・・・・」

「話を聞けってば、聞け〜!!」


「ぎゃああ〜〜〜あ・あ・あ・ぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜」






――――了



またまた楽しいお話ありがとうございました!
夜叉の仮面をとっての1話目はウラに置いてますので〜
モモ&良太郎くんの記念すべきCDネタと、あのCMや写真集まで〜♪
何だか実際彼等が歌った感じがひしひしとして、良いですねー
お姉さんあのドリンクすらアレンジ。凄いです。
今回はウラのセクハラも素敵でしたっ(笑)やはりウラはエロいですから!
そして良太郎@黒バージョンの甘えっこ攻めが元気です!(笑)


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