ウラ×モモ


小説 柊様





「僕の過去、あなたの未来」

どうしてこうなってしまったのかわからない。
でも、あなたと二人っきりで過ごす、甘くて痛々しい時間は嫌いじゃない。
あなたは、僕のことなんか大嫌いだろうけどね。
ねぇ、そうでしょ?
センパイ。

初めてはずいぶん前。
でも、昨日のことみたいに思い出せる。
ちょっと過去から体を借りてきて、四人で戦ったあの時。
体が二つあるのをいいことに、僕は初めてあなたを抱いた。
無理やり、そうでもしなきゃ、あなたは僕に黙って抱かれてくれたりしないだろうから。
僕より少し大きな背中を後ろから見下ろしてた。
痛みに耐えるしかないあなたを、なんだか凄く、愛おしく思ってた。
…って言っても、体は別のものだったけど。

そうして今日も、あなたに会いに少し未来へ飛ぶ。
過去に飛ぶとややこしくなるから、ちょっと損だけど未来のあなたに会いに行く。

夜にふらっと現れる僕を見ると、あなたは露骨に不機嫌な顔をする。
ぶつぶつ文句を言いながら、眠たそうな目をこする。
「…おい」
「なぁに?」
今日も、卑怯な僕から逃げようとしてるんだよね。
「いい加減に…」
「ほんとは喜んでるくせに」
顔を近付けてそう言って笑ってみる。
途端にあなたは目を見開いて、大声を出す。いつものこと。
「んな訳ねえだろこのっ…!」
無理やり唇を塞いで、最後までは言わせない。
それも、いつものこと。
そして僕達の夜は、静かに、滲むように更けていく。

僕はあなたに否定される度に、大袈裟に悲しがる。
あなたは僕の嘘に気付きながら、騙されたふりをする。
それが凄く、凄く幸せだ。

だから、あの子に憑依したまま、時の中をフラフラするのも、悪くない。
今は、そう思ってる。

「ねぇ、センパイ」
「なんだよ」
朝になるまでは同じベッドで寝ているのに、
いつもあなたはできるだけ僕から離れようとする。
話しかけても、僕のほうなんか見ようともしない。
だから、無理やり抱き締めてしまいたくなるんだよね。
「喘ぐの下手だよねぇ」
「てめえ…っ」
ほら、こっち向いた。
「こんなに…一緒にいるのにねぇ。全然上手くならない」
分かりやすくて、気が短くて、そのくせかわいくて。
だから好きで。

振り向いたあなたはなぜか、少し驚いた顔をした。
「お前、なに悲しそうな顔してんだよ」
「してないよ」
「してる」
あなたの顔が近付く。僕は驚いて、少し体を引いてしまった。
「お前なぁ」
あなたの目はまっすぐ僕を見ている。今まで一度も、なかったこと。

あなたは驚いた僕を見て、溜め息をついた。
「好きなヤツとなんかあったのか?」
「はぁ?」
何を言ってるんだろう、この人は。
「前に電話してたヤツだよ」
「ああ…」
あの女の子は№3だって言ってるのに。

「要するにオレはソイツの代わり、ってことなんだろ」
あなたは目をそらした。完全に固まってしまっていた僕は、少し解放された気がした。
「早く仲直りしろよ」
言いたいことを好き勝手に言って、あなたはまた、僕に背を向けた。
なぜだか分からないけど、あなたは少し寂しそうに見えた。
「ねぇ、センパイ」
背を向けたあなたに手を伸ばして、もう一度抱き寄せた。
あなたはいつもみたいに、僕が触れた瞬間に体を強ばらせる。

「僕が好きなのはね、センパイなんだ」

あなたの体はびくん、と動いた。
「どうせ得意の嘘だろ」

すぐに否定したかった。
だけど、恥ずかしくてうまく言葉に出来ないから、いっそ嘘だよと笑いたかった。
「嘘じゃないよ」
たったこれだけの本当を伝えるのに、いつもならどれくらいの嘘で包むんだろう。
「ずっと、好きだった」
あなたを抱く腕に力を込めた。
最初は抵抗していたあなたも、今は黙って僕の行動を許容してくれるようになった。
ごめんね、センパイ。嫌がってたのに。
僕はこんな愛し方しかできなかったんだ。

「お前…」
あなたは俯く。
「好きなんだったら」
あなたの声は、乱暴な言葉とは裏腹に優しく、心地よく響いてくる。
「もっと…、もっと、早く言えよ」
本当は、もっと…何だったのか、わからない。
でも、あなたは驚くほど優しい言葉で、僕を肯定したように、思った。
「センパイ…?」
「もう寝る。眠い」
また自分だけ好き勝手なこと言って、僕を置いていく。
そんな風に、結局お人好しで素直なあなたが、僕は好きだ。
「おやすみ、センパイ」
僕達の夜はもうすぐ終わる。
僕達は何事もなかったかのように、朝から他愛もないことで喧嘩するんだろう。
そう思うと嬉しくて、それから寂しかった。

「明日も、来いよ」
夢の中で、あなたが囁いた声が聞こえた。
僕は微かに頷いて、柔らかな眠りに落ちていった。





わああああ! 可愛い浦桃をありがとうございますッ(≧∇≦)//
モモの切なくも天然な質問に心奪われました…
ううっ…めちゃめちゃ可愛いですっっ!!
浦もこんな可愛い先輩の攻略には、寿命をすり減らしますです~(笑)
また是非素敵作品を読ませていただけると嬉しいです!!
どうかどうかvvv


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