仮面ライダー電王
ウラタロス×モモタロス

小説　吉野さま

『ＯＮＬＹ　ＳＴＡＲ』

僕らは過去を変える為に未来から来た。

過去を変えることは未来を変えること。

そう、僕らがいた未来さえも。



「ねぇ、センパイ？未来のこと、覚えてる？」

そう言うとモモタロスは顔をしかめた。文章的にちょっとおかしいのは分かるけど、そんな顔しなくてもいいんじゃない？

「ああ、そんな顔したら可愛い顔が台無しですよ？センパイ」

「うっるせぇ！ふざけたこと抜かすな！つか、その、センパイって言い方も気に入らねぇんだよ、てめぇは！」

「はいはい。どうせ僕が何しても気に入らないんでしょ、モモは。で？覚えてるの？覚えてないの？」

「何をっ？」

「だから、ここに来る前のこと」

改めて問うとモモタロスは素直にしばらく考え込む。無防備で思わず襲いたくなる。まぁ、いつだって無防備なんだよ、このセンパイは。

誰にでも、ってのが本当に気に入らないけど。

とりあえずそんな衝動を抑えて、ナオミさんの淹れてくれた美味しいコーヒーを飲みながらモモタロスの返事を待つ。

「……あれぇ？」

しばらくして、そんな声を出しながら首をひねるモモタロスを見て、ああ、覚えてないのかと僕は判断する。

過去を変える使命があったことは覚えてる。でも、誰に言われたのか、何の為に変えるのか、僕でさえよく覚えていない。

過去を変えることはきっと僕らの本能に組み込まれている。まぁ、僕らはちょっとアウトサイダーだけど。僕はわざと大げさな溜息をついて見せた。

「これだけ考えて、答えがそれ？はーあっ」

「う、うるせぇな！てめぇは覚えてんのかよ！？」

「モモよりは覚えてると思うけどね。教えてあげようか？」

「な、なん、だよ？」

ちょいちょいと手招きするとこれまた素直に顔を寄せてくる。ああ、もう。襲ってもいいかなぁ。そんなことを思いながらふっとモモタロスの首筋辺りに息を吹きかけた。

「っひ！て、てめぇ！！何しやが…」

「白と赤」

「ぁあ！？」

「覚えてるのはそれ。白い背景と赤い光。赤い光はモモだったんじゃないかなぁ。ねぇ、僕ら前にも会った事あるんじゃない？」

「はっ、お前にしたら随分と古典的な口説き文句を持ち出してきたなっ」

「モモはお子様だからこれくらいで丁度いいかと」

「てめっ」

何だ、意外。口説かれてる自覚あったんだ。…いや、あるわけないか。今のは言葉のあやみたいなものだろうな。モモタロスだもんね。

「おい、てめぇ…今、何か俺様の悪口考えてなかったかぁ？」

「本当に意外。今日のセンパイは鋭いね」

「だぁああー！本っ当にてめぇだけはぜってぇ許さねぇからなー！！」

「でも、さっきのは本当だよ」

そう言うとモモタロスは振り上げてた拳を止めた。ぼくは笑って、席を立つとモモタロスの肩をポンと叩いてから横を通り過ぎた。

「僕、良太郎に会えて良かったよ」

「あ？何でだよ？」

「さぁね」

振り向いたモモタロスにそう答えて、僕は車両を出た。



だって、そうだろう？電王は過去を変えなくていいんだから。

過去を変えなければ未来は変わらない。

君と僕はきっとこの先の未来で会ってる。

まぁ、過去を変えたくなるような未来なんだからろくな未来じゃないかもしれないけど。

君がいないよりはずっとマシさ。

僕らはきっと特攻隊。この命を以って、過去を変え、未来を変える。

誰だか知らないけどごめんね、隊長。

僕、あの赤い光しか見えないんだ。



終